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ケトン体を考える

『薬を使わない健康維持の秘訣㉖』でも書きましたが、【ケトン体が人類を救う】という本をご紹介したことがありました。開業産婦人科医で果敢に学会と戦っている❝宗田哲男先生❞の著書です。

これまでの常識のまちがいということは医学の世界では何ら珍しくありません。たとえば、「傷は絶対消毒してはいけない」というのは今や常識ですが、少なくとも10数年前までは、擦り傷や切り傷などあるいは外科手術で切った傷跡は、感染を起こさないように消毒してガーゼを当てて、絆創膏で留めておく・・・というのが常識でした。

傷が治癒するためには多くの炎症担当細胞が傷の周りに集まり、修復作業をしています。消毒薬はそんな正しい創傷治癒力を日本に紹介した張本人の夏井睦先生も「炭水化物が人類を滅ぼす」という本を書いておられます。

話を『ケトン体』の話に戻します。宗田先生は、その冒頭で「まとめ」として以下のことを箇条書きにしています。 以下抜粋

今の栄養学では、間違っている6つの説(神話)があります。

①カロリー神話

血糖値とカロリーにはなんの関係もない。にもかかわらず、カロリー制限で糖尿病を治そうとする矛盾。無意味でかえって悪化させる。

②バランス神話

食事は「バランスよく」と言って実は炭水化物を60%も摂らせる。タンパク質、脂肪はそれぞれ20%である。この栄養比率には学会も認めるようになんの根拠もない。

③コレステロール神話

必須栄養素を満たすには、肉や卵やチーズは最も簡単な食品である。しかし、お肉や脂肪は、今までは「コレステロール値が上がるから食べないように」と教えられている。この考えは、2015年厚労省の通達で公式に否定されたが、ほとんどの医者と栄養士は、未だこれを理解していない。

④脂肪悪玉説と⑤炭水化物善玉説

肥満は脂肪が原因。これはほとんどの人がそう信じているが、これこそがまちがいであって、肥満は糖質の過剰摂取で起こる。

⑥ケトン体危険説

ケトン体は危険な物質であるというのは20年前の知識で、もはや前世紀の遺物である。今やケトン体は胎児、新生児のエネルギー源であり、健康とアンチエイジングのエネルギー源である。

以上のように、従来常識と考えられていたことが、今では全くのまちがいであったことが、いくつも判明しています。まちがった栄養の知識や習慣で糖尿病や癌や認知症になるのは、なんとか避けたいものです。

ビタミンの有用性について ~分子栄養学という学問~

「300倍のビタミン投与でIQが65も上昇!!」 これは、1995年に書かれた本の文章の一部です。本のタイトルは「脳細胞はよみがえる」著者は故・三石巌先生です。1958年、ワトソンとクリックにより分子生物学という学問が成立しています。三石は1960年代の初めに早くもこの学問に注目しています。三石は東大の物理学科を卒業した物理学者で医師ではありません。その彼が『分子栄養学』という学問に触れたことにより、人間の生命現象を物理学者の立場で考えるようになったのです。

分子栄養学は、生体の活動が1~10までDNAの指令による事を明らかにしたわけですが、『DNAは生体の設計図であり、全てはその暗号を解くことが鍵である』と考えました。その結果、タンパク質、ビタミン、ミネラルが特に重要であると突き止めました。つまり、理論的に合理的にまた純粋に科学的に考察して、栄養を理解したのです。 そして、「わたしの分子栄養学は、人間が健康で長生きするためにはどうしたらいいかということに対する、最先端の科学に基づいた健康自主管理の取り組み方である。」と豪語しています。

著書の中でアメリカで行われた実験を紹介しています。『1983年アリゾナ州の大学の精神科の教授たちは、IQ70の境界以下にある子どもを対象に、ビタミンの大量投与を試みて、そのうちの30%でIQを90程度まで引き上げたということである。ただし、ビタミンの必要量には個人差があり、通常の所要量の300倍の投与で反応する人もいるのである。つまり、ビタミンの至適量は一概には決められないために、とりあえず大量に投与することが必要』というのが分子栄養学的な考え方なのです。このような考え方を『メガビタミン主義』と言います。

三石は90歳を超えてもなお、スキーや水泳をいそしみ、全国を駆け回って講演をし、その合間に執筆を行い、膨大な数の著作を残しました。その分野は、童話から実用書、物理学の教科書、様々な専門書に及び、もちろん栄養に関する本もあまた書いています。1997年に95歳で逝去しましたが、彼の残した業績は、栄養学に革命的な考え方をもたらし、死後もますます現在の栄養学に大きな影響を及ぼしていきます。

続・ビタミンの有用性について ~分子栄養学という学問

『ガンはメカニズムを純粋に物理・化学で理解しようとしました。彼のいう『分子栄養学的な考え方』です。

ノーベル化学賞を取った福井謙一博士の理論がこの考え方に理論的な背景を与えることになります。「発ガンという現象は、発ガン物質と生体分子との間におきる化学反応です。ですからこれ(発ガンの問題)は、まさに化学の問題なのです。」

特に発ガン物質として最も問題になるのが、活性酸素と言われています。活性酸素を多く発生させる原因はたくさんありますが、代表的なものは以下の5項目です。

①酒とたばこ ②糖質(炭水化物)の過剰摂取 ③ストレス(肉体的・精神的) ④激しい運動 ⑤紫外線や放射線

これらの原因をなるべく減らすことが大事ですが、活性酸素を帳消しにする対策がもっと大事です。つまり、抗酸化作用のあるビタミンやミネラル、抗酸化作用のある機能性食品、そして良質のタンパク質を充分に摂ることが大事なのです。このような考え方を『メガビタミン主義』と言います。

三石は、高ビタミンと高タンパクの必要性について、しつこくしつこく説いています。

機能性表示食品の有用性について ~ラクトフェリン~

オギャーと生まれた赤ちゃん、帝王切開でない限り赤ん坊は、生れ落ちるその瞬間に産道で感染を起こします。子宮の中は無菌状態ですし、もちろん羊水の中に浮かんでいますので肺呼吸はしていません。破水して大気に触れた赤ちゃんは、産道を通り抜けながら必死に今までと違う方法で呼吸をし始めなければなりません。産声は、今まで水浸しだった肺に一気に空気を送り込み、縮んでいた肺を膨らませたことを示す感動の瞬間なのです。

そのかわりに、母親の産道でたくさんの菌に感染もします。その菌の種類は何万種類もあるといわれます。中には大腸菌やウェルシュ菌などのいわゆる悪玉菌もいれば、ビフィズス菌に代表されるような乳酸菌もいます。もちろん生まれたての赤ちゃんの消化能力はとても弱く、胃酸の分泌も不十分ですから、外界からの病原菌を胃酸で倒すことはまだできません。そこで、腸内の細菌を乳酸菌だらけにすることで酸を作り出し、身を守ろうとします。

では、どうやって乳酸菌以外の菌を駆逐するのでしょうか?一般的に病原性の強い菌やウイルスは、鉄分がなければ成長できません。ところが乳酸菌は鉄がなくても生きていけるのです。そこで、鉄分を囲い込んで悪玉菌やウイルスたちに鉄をやらないようにするのです。

その物質がラクトフェリンです。ラクトフェリンは、初乳と呼ばれる出産後3~4週間までに分泌される母乳に大量に含まれています。この物質の働きのおかげで、赤ちゃんの腸内は1週間もすると乳酸菌でいっぱいになります。そして、小腸の一番末端のところに存在するリンパ組織が免疫叢を獲得するためにリンパ球の教育を始めます。ラクトフェリンには、このように感染防御のための巧みな仕組みを支える作用があります。

有用なビフィズス菌とそのエサとなるオリゴ糖と一緒に摂ることで、免疫力を高めることが期待されます。

機能性表示食品の有用性について ~オリーブ葉のエキス~

昔、スペインとフランスが戦争をした時(1635年~1659年)の話です。当時のフランス軍は世界最強といわれていました。一方の弱小スペイン軍は、瞬く間に降参するだろうと予想されました。ところが、当時流行した疫病(マラリア)によって、兵士たちが次々に倒れて、両軍共に見えない敵に悩まされたそうです。スペインでは戦場から帰還したマラリア罹患の兵士たちにある薬を投与しており、すぐに回復してまた戦場へ送り込むことができました。一方、フランス軍はその薬がなく、苦戦を強いられることになりました。

そこでフランス軍は、スペインへスパイを送り込み、その秘密の薬をつきとめて、辛くも勝利へ導き、停戦条約を結んだのだそうです。その薬がオリーブ葉を煎じたものだったそうです。オリーブ葉のエキスの中には、オーレユーロペンと呼ばれるポリフェノールが含まれており、多くの研究であらゆる種類の病原微生物に対する抗菌活性を示すことがわかっています。

今日、大きな問題になっている多剤耐性菌や各種のウイルス、真菌などにも効力を発揮します。有効な抗生物質が底を尽きつつある昨今、有用なサプリメントとして、注目度が高まってきています。このオーレユーロペンは抗菌作用の他にも、強力な抗酸化作用によるLEL(悪玉コレステロール)の酸化抑制や動脈硬化予防、血管拡張作用による循環改善作用、消化管の潰瘍の改善効果、菌・腱・人体・結合組織などの痛み(繊維筋痛症)の改善効果などが認められています。

ところが、純粋化されたオーレユーロペンを摂取しても体内で簡単に分解されてしまい、その優れた効果が得られないことがわかり、某世界的薬品メーカーは製品化をあきらめてしまいました。しかし、純粋化しないで、元々のエキスのままで投与すると、体内の酵素で活性化されて効果を発揮することがわかり、サプリメントとして使われるようになったという経緯があります。

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